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渡辺先生の思い出 | |
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本来勉強というものが嫌いな性分であったために、3年間遊び呆けて留年してしまい、それでもなお1年間ぶらぶらしていた私を拾ってくれたのが渡辺先生、古川先生であった。 合成教室に入る前の野球部員としての4年間は言うまでもないが、教室に入り先生の下で実験をするようになってから先日亡くなられまで、渡辺先生には本当にお世話になり、また影響を受け続けてきた。 情熱的、誠実、リーダーシップ。 先生の魅力を表現する言葉をあげればきりがない。 合成教室での先生はまさしくそれらの言葉通りで、化学実験、実験後の飲み会、野球、釣り、麻雀など、何をするにしても全力で、私達学生はいつもその熱気にあてられていたような気がする。 私が有機合成化学に興味を持ち、深く入り込むこととなったのはそのせいかもしれない。 教室で実験を始めた頃、化学の知識をほとんど持ち合わせていなかった私はいつも先生にくだらない質問してばかりしていたが、しかし先生はそれらの質問に対し、呆れることも無く実に辛抱強く答えていただいたことを思い出す。 それは私がこの道に入っていく上で、とても幸運であった。 その後大学院に進んだが、先生と私はよく日曜日の午後に実験室で一緒になった。 そういう時は決まって、先生にいれていただいたコーヒーを一緒に飲みながら研究に関する新しいアイディアについて議論したりしたものだった。 今思えば、青二才だった私は渡辺先生に1対1で向き合っていただけたお陰で、遅れ馳せながら化学者を目指す上で必要ないろいろなことを短期間に学ぶことができたのだと思う。 |
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